犬のレッグ・カルベ・ペルテス病(大腿骨頭無菌性壊死症)について

レッグ・カルベ・ペルテス病は若齢の小型犬において主に発症する、原因不明の大腿骨頭(太ももの骨の骨盤との境部分)が壊死する病気です。

症状は、後ろ足の破行(びっこをひくこと)が段々と悪化してくることです。
片足での罹患が多いですが、両足での罹患が認められることもあります。

診断は、触診である程度疑うことが可能で、レントゲン検査やCT検査によってさらに疑いを強いものとしていきます。
小型犬の後ろ足の病気には、他にも膝蓋骨脱臼症などがあるため、慎重に診断する必要があります。

治療は内科的に治療することが困難なため、手術:大腿骨頭骨頚切除(FHNO)が主に選択されます。

トイプードルのレッグ・カルベ・ペルテス病の症例

症例は7ヶ月のトイプードルで、ホテル前の診察を希望に来院しましたが、右後ろ足の破行もあり他院にて膝蓋骨脱臼症を指摘され、手術の是非の相談もしたいとのことでした。

来院時には右太腿(ふともも)の筋肉が痩せ細っており、院内でも間欠的に破行を呈していました。

触診にて、膝蓋骨脱臼症はあるものの、破行の原因はレッグ・カルベ・ペルテス病が強く疑われたため、レントゲン検査を実施しました。

青矢印:左右の太腿の太さが違う。
赤丸:大腿骨頭の壊死が疑われる。

以上の検査結果より、レッグ・カルベ・ペルテス病が強く疑われたため、飼い主様と相談し、大腿骨頭骨頚切除を実施しました。

手術により壊死した大腿骨頭部分を摘出しました。
摘出した大腿骨頭の表面は肉眼的にも異常がありました。

この病気は、手術後のリハビリが大変重要になってきます。一度細くなってしまった筋肉は同じ大きさまで戻るのにとても時間がかかるためです。

もし、ワンちゃんの後ろ足に違和感などがある場合は、早めに病院までご相談ください。

大腿骨頭と骨頚部が綺麗に切除されています。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。