モルモットの角膜潰瘍について

モルモットの眼の病気は眼の表面の傷や、潰瘍、結膜炎が最も一般的であり、日常的な診察での遭遇率も高いです。
原因に沿った治療を行えば治りも良く、後遺症なども基本的には残りません。
しかし、治りが悪かったり何度も繰り返してしまうと傷の跡が残り、傷が深いと失明のリスクもありますので早めの診断、治療が必要です。
今日はそんな角膜潰瘍を患ったモルモットの症例をご紹介します。

角膜潰瘍とは

眼の表面を角膜といい、そこに炎症を伴うびらんができることを角膜潰瘍と言います。
この角膜はいくつかの層が合わさってできており、
最表面から

  • 角膜上皮
  • 上皮基底膜
  • 角膜実質
  • デスメ膜
  • 角膜内皮

と続きます。

この層のどの部分まで傷が及んでいるかにより、その治療難易度や治るまでの時間が変わってきます。
特に、穿孔という角膜全層を突き破るような傷は失明のリスクもあり、注意が必要です。

原因には外傷や牧草などの異物の混入、感染が多く、
症状としては

  • 眼を気にして開けない
  • 涙が出る
  • 目脂が多い
  • 白目の充血

などが挙げられます。

診断・治療

診断には一般的な眼の検査はもちろん、傷のある部分を染めることができるフルオレセイン染色検査を実施します。
また傷の表面を優しく綿棒で拭い取り、細菌が繁殖していないかを顕微鏡で観察します。
治療は抗生剤の点眼や、角膜の表面を覆い潤いを与えて角膜を保護する人工涙液点眼を行うことが一般的ですが、目脂が重度または異物の混入が疑わしい場合は、生理食塩水などを用いて目の洗浄をおこない、目脂や異物を洗い流します。

角膜潰瘍のモルモットの実際の症例

右眼を気にして開けづらそうな2歳のモルモットが当院に来院されました。

診察中も左眼と比較して右眼は開け難く、明らかに気にしている素振りが見られました。
フルオレセイン染色の検査を実施したところ、目尻の角膜表面に蛍光緑に染色された領域が確認されたため、角膜潰瘍と診断しました。

治療は角膜表面の保護のため、人工涙液と抗生剤の点眼を行っていくこととしました。
1週間後、症状は良化し後遺症などもなく過ごしています。

痛みが取れてよかったね!

まとめ

角膜潰瘍は一般的な病気ではありますが、その程度によっては失明してしまう怖い病気でもあります。
傷の原因にもよりますが、ケージの環境の整備や、ケージ外で遊ばせる時は目を離さないなどの対策をしましょう。
また、角膜の傷や潰瘍は非常に痛く、飼い主様が目を観察することが難しい場合もあります。
眼を気にしている、開けづらそう、涙が多いなどの症状が見られたら、様子を見ずにすぐに病院へご相談ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。