猫のストルバイト結石について

猫のストルバイト結石は成猫で発生しやすい、尿路結石の一つです。
ストルバイトとは尿に含まれるマグネシウム、リン酸塩、アンモニウムなどのミネラル成分が結晶化したもので、結晶が集まって結石となると、尿道などの尿路に詰まって緊急的に処置が必要になる場合もあります。
ストルバイトができる原因は、ミネラル含有量の多い煮干しや鰹節を毎食与えるなどの栄養バランスの偏り、飲水量の減少、肥満、運動不足、細菌感染などによって起こると言われています。
また一説では、猫の祖先は砂漠地帯で繁栄し、乾燥への適応能力が高く、尿の濃縮機能に優れていることから元々尿石症になりやすい体質であるとも言われています。

ストルバイト結石は排尿時の痛み(排尿時に鳴く)、血尿、頻尿、尿が出ないといった症状で動物病院へ受診し見つかることが多いです。
ただ、こういった排尿に関連したわかりやすい症状だけでなく、元気消失、食欲低下、嘔吐、腹痛などの症状から見つかることもあります。
無症状のこともあるので、健康診断で偶然見つけられることもあります。

ストルバイト結石症は尿検査や、超音波検査・レントゲン検査などの画像検査によって診断することができます。

猫の膀胱炎(ストルバイト結晶)の症例

症例は2歳の猫ちゃんで、昨夜から頻繁にトイレに行くとのことで来院しました。
画像検査では結石は認められませんでしたが、尿検査ではストルバイト結晶が認められました。

尿検査で認められたストルバイト結晶

尿内に結晶が認められ、膀胱炎を起こしている場合には尿のpHをコントロールするための食事療法や、感染がある場合は抗生剤を投与するなどの内科的治療を行うことが一般的です。
幸いなことに、本症例は感染もなく、このストルバイト結晶は食餌療法で溶かすことができるので、療法食への変更を指示しました。

2週間後の診察時には膀胱炎症状も無くなり、尿検査でも異常は認められませんでした。

猫の尿路結石症は再発する可能性が高く、生涯付き合っていくこともある疾患です。
尿のpHをコントロールするための食事療法、水分を多く取れるよう水飲み場を増やしたり、時にはウェットフードをうまく活用したり、トイレを清潔に保つことで猫がおしっこを我慢させないなどの工夫もこの疾患の予防になります。
また、いち早く変化にも気がつけるよう日頃から尿の色や回数などをある程度把握するといいかもしれません。

猫のストルバイト結石症は尿検査や画像診断で見つけ出すことができる可能性もありますので、年齢に限らず体調に異常がなくても定期的な健康診断をお勧めしています。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。