犬の鼻腔内異物について②

鼻腔内異物とは異物を鼻腔内に吸引してしまうことによって引き起こされる病態です。
外から吸い込んで鼻に詰まってしまうこともあるし、嘔吐があった場合に胃から逆流して鼻に詰まってしまうこともあります。
犬では多くの場合が植物が鼻腔内に詰まってしまうことが多いようですね。
症状は、くしゃみ・逆くしゃみ・鼻汁・顔を振るなどが一般的です。
突然異物が詰まってしまうことが多いので、今まで無症状だったのに急に発症するのが特徴的です。
鼻腔内異物がある状態で長期間放置すると、症状が治らないどころか、鼻腔内に肉芽組織が形成され、重症化の一途を辿ることが多いです。

以前にもご紹介したことがある鼻腔内異物ですが、今回は鼻腔内異物(笹の葉)を摘出したワンちゃんの症例をご紹介します。

犬の鼻腔内異物(笹の葉)を摘出した症例

症例は9歳のワンちゃんで、治療しても逆くしゃみが治らないということで当院に来院されました。
各種問診と検査から、鼻腔内の異物が疑われたため、全身麻酔をかけて内視鏡下での鼻腔内異物の確認と摘出を行いました。
内視鏡で観察した結果、鼻咽頭(鼻から喉にかけての部位)に笹の葉がへばりついていることが確認されました。

笹の葉を内視鏡で確認しました。
細い鉗子を使って笹の葉を取り出しました。

こういった植物は鼻腔内に長期間存在するとだんだんと脆くなっていき、細い鉗子で摘出を試みてもちぎれたり、崩れたりすることもあります。
そのため、今回も慎重に摘出する必要がありました。

摘出した笹の葉

この笹の葉を摘出したのちに、さらに残存していないか内視鏡で確認し、鼻腔内を洗浄して、処置を終了しています。

鼻腔内に何もないことを確認しています。

内視鏡終了後は逆くしゃみもおさまり、スッキリしたお顔になってくれていました。

スッキリしたね!

鼻腔内異物は原因さえ取り除けば劇的に症状が改善する反面、内視鏡検査をしないと診断が困難なため、適切な治療に至らないことも多く存在します。
鼻腔内異物を適切に治療するためには、どのような経過から、くしゃみや逆くしゃみなどの症状が出たかを、動物病院で獣医師に伝えることが最も重要です。

もし、今回の症例のような症状や経過が見られた場合はすぐに動物病院にご相談ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。