猫の肺炎(誤嚥性肺炎)について

誤嚥性肺炎とは唾液や食べ物・嘔吐物が気道内に吸引されることで生じる肺炎です。
犬において誤嚥性肺炎は時折遭遇する疾患ではありますが、猫では比較的稀な疾患になります。その理由は異物が気道内に入りにくいことが挙げられます。
また、誤嚥性肺炎に限らず、肺炎の診断はレントゲン検査や血液検査などによって行いますが、犬と比べて検査による鑑別が難しい場合が多いです。
肺炎の症状は呼吸が苦しいという主訴が大半ですが、猫の呼吸困難の原因は猫喘息や心臓病などもあり、それらがレントゲンのみでの鑑別がつきません。
今回は誤嚥性肺炎が疑われた猫ちゃんの紹介になります。

猫の肺炎(誤嚥性肺炎)の症例

症例は生後10ヶ月の猫ちゃんで、嘔吐後から呼吸が苦しそうということで来院しました。
来院時に呼吸困難が認められ、緊急性が高いためすぐに検査・治療を実施しました。
レントゲンでは肺が白くなって(正常では黒い)いました。
胸部FASTエコー検査(緊急時に行う、肺や心臓に異常がないかを調べる検査)を行い、心臓に問題がないことを確認した上で、嘔吐による誤嚥性肺炎と診断し、ICU(動物用の集中治療)にて治療を開始しました。

入院時のレントゲン検査。肺が全体的に白く(異常)なってしまっている。

治療開始後から、段々と元気になり、呼吸困難も良化していきました。
退院時にはレントゲン検査で肺もきれいになり、元気に退院していってくれました。

退院後のレントゲン検査。肺が黒く(正常)なりました。

猫の呼吸困難をはじめとした緊急疾患では、原因の鑑別が非常に重要になってきます。
もし、猫ちゃんの呼吸が苦しそうなどあれば、すぐに病院に来院してください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。