猫の皮膚糸状菌症について

皮膚糸状菌症とはカビの一種による皮膚の感染症で、人では白癬(水虫)として有名です。
人と動物では主に感染する糸状菌の種類は違いますが、基本的にこの皮膚糸状菌症は人獣共通感染症と言われ、人から動物へ、動物から人への感染が認められます。
犬では特定の犬種以外あまり診ることはありませんが、猫やエキゾチックアニマルでは時折遭遇する疾患です。

検査は、ウッド灯検査・抜毛検査・培養検査・PCR検査などによって行われます。
治療は外用薬と飲み薬によって行いますが、ただ本人を治すだけではなく、皮膚糸状菌はそこらへんの環境に長い間留まります。そのため、環境も色々と気を付けて治療していかなければなりません。

今回は、皮膚糸状菌に感染した猫さんの紹介になります。

猫の皮膚糸状菌症の症例

症例は生後3ヶ月の仔猫で、腕の部分の毛が抜けてきたということで来院しました。 視診の時点で皮膚糸状菌症が疑われたため、ウッド灯検査と抜毛検査を行いました。

右手が部分的に脱毛しています。
ウッド灯検査で青白く発光しています。これにより皮膚糸状菌症が疑われます。
青白く発光している部分の毛を顕微鏡で確認し、糸状菌の感染が強く疑われました。

皮膚糸状菌症の治療には飲み薬と外用薬がありますが、飲み薬は稀に肝臓に負担がかかることがあります。この症例はまだ若かったため、先に外用薬と生活環境の指導を行なっていきました。

その後、ある程度成長したところで飲み薬も併用し、検査で陰性が出るまで治療を継続しました。

治療の途中経過です。発毛も認められました!

皮膚糸状菌症の治療は、ただ飲み薬を飲む・外用薬を塗る、だけで良いというものではありません。
正しい知識のもと、正しい環境指導を行い、ペットだけではなく飼い主様にもうつらない様にしていかなければなりません。

もし、猫ちゃんに皮膚病があるとなった際は、病院にご相談ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。