フェレットの消化管内異物(毛球症)について

フェレットは好奇心旺盛な動物であり、色々なものを咬む傾向がありそれらを飲み込んでしまうことがあります。特に換毛期では自分で毛繕いすることで多量の毛を飲み込んで、それが胃内で塊になってしまい、症状が発現します。
胃内に食餌以外のもの(異物)がある場合、気持ち悪さによって口をくちゃくちゃしたり食欲が減り、嘔吐が見られる様になり、この異物が胃から先に送られ腸に行った場合は、腸の中で異物が詰まり、急変することもあります。

消化管異物の診断は、触診・レントゲン検査・腹部超音波検査によって行い、治療は内視鏡もしくは外科的に異物を摘出します。

今回は十二指腸に毛球が詰まり腸閉塞をきたしてしまったフェレットさんをご紹介致します。

フェレットの毛球症(腸閉塞)の症例

症例は3歳のフェレットで、以前から気持ち悪さがあり、食欲不振・元気消失を主訴に来院しました。
血液検査で重度の脱水・電解質バランスの乱れ・低血糖・黄疸が認められ、意識レベルの低下も認められ、低体温に陥っていました。
腹部超音波検査で十二指腸に異物が認められたため、異物による腸閉塞と診断しました。

十二指腸にある異物

本来ならすぐに手術を行うのですが、一般状態が悪く手術に耐えられない可能性が高いため、すぐに入院下で点滴などの治療を行い脱水・ミネラルバランス・低血糖の補正を行いました。
内科治療で、一般状態が改善したところで、開腹手術にて十二指腸の異物を摘出しました。

異物が十二指腸で詰まっている。
摘出した異物(毛球)。慢性的な刺激により胃の中の出血を来たしたことにより、真っ黒になっていました。

術後、経過が長かったこともあり、急性腎不全をきたしかけましたが、尿量と輸液量のin/outの管理をし、無事多尿期も超えて回復してくれました。

無事元気に退院できました!

フェレットは異物誤食が多い動物です。
フェレットの異物の診断は、慣れていないと見逃すこともあるかもしれません。

もしもフェレットさんに嘔吐や食欲不振が見られた場合は、すぐに動物病院にご連絡ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。