犬のアナフィラキシーについて
アナフィラキシーは、急激なアレルギー反応による症状です。
人でも食物のアレルギーやコロナワクチンなどで話題になり、聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。
実は犬でもアナフィラキシーが起こることがあるのです。
今回は犬のアナフィラキシーについて、実際の症例もご紹介しながら解説します。
アナフィラキシーは命に関わることもあるため、ぜひ理解を深めて愛犬の健康管理にお役立てください。
アナフィラキシーとは
アナフィラキシーとは、特定の原因物質に対して急激な免疫反応が起き、全身に重篤なアレルギー反応が起きる病態です。
激しい免疫反応が起きると体内で大量の炎症物質が放出され、体内の様々な臓器に影響が出ます。
重症の場合には、アナフィラキシーショックと呼ばれる危険な状態になります。
炎症物質の影響で血圧が急激に下がり、全身の血液循環が保てなくなって一気に状態が悪化します。
治療が遅れてしまうと、数十分〜数時間のうちに亡くなってしまうこともあるのです。
犬のアナフィラキシーの原因
アナフィラキシーの主な原因としては次の様なものが挙げられます。
- 食べ物
- 虫刺され
- 毒物
- 薬剤
- ワクチン接種
普段食べなれないものを食べた、虫に刺されたなど、原因として思い当たることがあれば獣医師に伝えましょう。
ワクチンや薬剤などは、飼い主様が把握しやすいのでわかりやすいですね。
同じ原因で再度アナフィラキシーを起こす可能性があるので、再発を防ぐためにも役立つ情報となります。
ただし、全く原因がわからない場合も多々あり、普段と変わらない生活なのに症状が出て、原因が特定できないことも多いです。
犬のアナフィラキシーの症状
アナフィラキシーでは次のような症状が出ます。
- ショック症状(急にぐったりして立てない、刺激への反応が鈍いなど)
- 顔や体(特に四肢)の腫れ
- 蕁麻疹(じんましん:皮膚の広範囲でぼこぼこした腫れがみられる)
- 皮膚の赤みや痒み
- 呼吸困難
- 消化器症状(嘔吐・下痢)
症状が軽い場合には、皮膚の症状や軽い消化器症状が出る程度で犬は元気であることも多いです。
ショックに陥っている場合には直ちに治療をする必要があります。
犬のアナフィラキシーの診断
犬のアナフィラキシーは、特定症状や検査結果から診断を確定できるものではありません。
症状が出たときの状況や、アナフィラキシーでよくみられる所見があるか、他の重大な病気が考えられないかなど、状態や検査結果などから総合的に考えて診断をします。
そのため、血液検査やエコー検査など、全身の検査をしっかりと行うことが大切です。
身体検査で低血圧の所見があるなど、ショックが疑われる場合には急いで検査を行い、並行して治療も進めていきます。
アナフィラキシーと診断されたら、アレルギーの炎症反応を抑える薬の投与や、血圧を上げて循環を保つ治療を行います。
これらの治療をすぐに行い、状態の悪化を防ぐことが重要です。
実際の症例
当院にてアナフィラキシーが疑われた症例をご紹介します。
今回の症例は、1歳4ヶ月の犬です。
お芋のおやつを食べた後に吐いたとのことで来院されました。
血圧は問題なく、ショック状態ではありませんでした。

血液検査では、肝臓の数値(ALT、AST)が上昇していました。
アナフィラキシーでは肝臓の血液循環が悪くなることで、肝臓の数値が上昇することがよくあります。
エコー検査では、胆嚢の壁が分厚くみえる「ハローサイン」がみられました。
胆嚢の壁は通常エコー検査でほとんど見えませんが、こちらの症例では分厚く見えていますね。
ハローサインは、胆嚢壁の浮腫を示しており、循環が悪くなっていることでみられます。
特にアナフィラキシーではよくある所見です。

以上の状態や検査結果から、アナフィラキシーを疑いました。
アナフィラキシーの治療で体調は改善しました。
まとめ
犬のアナフィラキシーは、急激な症状で命を落とすこともある怖い病態です。
あらかじめアナフィラキシーの症状を知っておき、早めに気付いて治療してあげることが大切です。
愛犬が急に吐いた、ぐったりしている、皮膚が腫れて痒がるなどの症状は、アナフィラキシーの可能性があります。
アナフィラキシーかもしれないと思ったら、すぐに動物病院までご相談ください。
執筆担当:院長 渦巻浩輔