犬のジアルジア症について
「ジアルジア」という寄生虫をご存知ですか?
ジアルジアは犬で下痢を引き起こし、稀に人間にもうつることもある人獣共通感染症です。
今回の記事では犬のジアルジア症について解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、参考にしてみてください。
ジアルジア症とは
ジアルジア症とはジアルジアという消化管内で増殖する寄生虫が原因の消化器疾患です。
ジアルジアは感染力が強く、免疫力の低い子犬を中心に下痢を起こし、時には重症化することもあります。
ジアルジアの感染経路
ジアルジアはどのように他の犬に感染するのでしょうか。
ジアルジアは消化管に寄生するため便とともに排出されます。
排出されたジアルジアは飲み水やフードなどと一緒に経口摂取することで感染します。
ペットショップやブリーダーなど子犬が多頭飼育されている環境では感染が広がりやすいと言われています。
ジアルジア症の症状
ジアルジアに感染すると下痢が生じます。
下痢は大まかに小腸性の下痢と大腸性の下痢に分かれます。
ジアルジアは小腸に感染するため小腸性の下痢が多いです。
小腸性の下痢では回数はそこまで増えず、下痢の一回量が増加します。
下痢の性状としては
- 水っぽい便
- 軟便
- 脂肪の混じった便
などさまざまです。
小腸では栄養や水分を吸収するため、小腸性の下痢では栄養の吸収不良や脱水に注意が必要です。
ジアルジア症の診断
ジアルジアは消化管内で増殖するため、糞便を検査することによって診断します。
糞便検査
糞便を顕微鏡で観察すると、ジアルジアが泳いでいる様子が観察できることもあります。
泳いでいる状態のジアルジアは体内から出るとすぐに死滅してしまうため、新鮮な糞便での検査が必要です。
残念ながら、糞便検査での検出率はあまり高くはなく、複数回の検査が必要になります。
抗原検査キット
糞便検査で検出できなくとも抗原検査キットで検出できることもあります。
抗原検査キットとは糞便を用いた専用のキットです。
抗原検査キットではより簡便に、正確な検査を行うことができます。
ジアルジア症の治療
ジアルジア症の治療はジアルジアに対する駆虫薬の投与です。
多頭飼育の場合は同居の犬にも投与しましょう。
薬の投与後に何回か糞便検査を行い、しっかりと駆虫できたかを確認します。
脱水などが生じている場合は症状に応じて対症療法を行います。
ジアルジア症感染後の対策
ジアルジア症は感染性の強い病気であるため、他の動物に感染を広げないことが非常に重要です。
感染を広げないためには
- 感染した犬を隔離する
- 糞便や体液が付着したものは密閉して廃棄する
- 犬舎を徹底的に消毒する
などの対策を行います。
実際の症例
ここからは実際に来院された症例を紹介します。
症例は4ヶ月齢の子犬です。
軟便を主訴に来院され、寄生虫の感染も疑われたため、糞便検査を行いました。
以下の動画が検査結果です。
糞便検査で泳いでいるジアルジアが観察されました。
この子犬はすぐにジアルジアの駆虫薬を使用し、その後軟便は改善しました。
まとめ
ジアルジア症についてお分かりいただけたでしょうか?
子犬の軟便や下痢がなかなか治らない時はジアルジア症の可能性があるかもしれません。
もし心当たりのある方はお早めに当院までご相談ください。
執筆担当:院長 渦巻浩輔