ハムスターの子宮蓄膿症について

ハムスターはペットとして人気の高い動物です。
犬猫に比べて体の小さなハムスターも、犬猫と同じように生殖器の病気にかかることがあります。
その中でも、子宮蓄膿症は比較的よく見られる病気の一つです。
今回はハムスターの子宮蓄膿症について詳しく解説します。
当院で実際に手術を行った症例をあわせてご紹介しますので、ぜひ最後までお読みいただきハムスターの子宮蓄膿症について理解を深めてください。

ハムスターの子宮蓄膿症について

メスのハムスターは、1歳を超えて高齢になると卵巣や子宮などの生殖器の病気にかかりやすくなります。
中でも子宮蓄膿症は、ハムスターでよく見られる病気です。
子宮蓄膿症は、子宮に細菌が感染することで起こる病気です。
子宮に細菌が感染することで、子宮に膿がたまったり陰部から膿が出てしまいます。
ハムスターの子宮蓄膿症は放置すると細菌が全身に増殖してしまい、命に関わることがあります。
早期に発見、治療することが重要です。

子宮蓄膿症の症状は?

ハムスターの子宮蓄膿症では

  • 血尿
  • 陰部から膿が出てくる
  • 元気食欲が低下する
  • お腹が大きくなる

といった症状がみられます。病気の初期の状態ではほとんど症状がなかったり、うっすらとした血尿が見られたりします。
子宮蓄膿症が重症化してくると、子宮に膿がたまることで子宮が膨らみお腹が大きくなることがほとんどです。
尿の色がいつもと違う気がする場合や、なんだか元気がない気がすると思った場合は早めに動物病院に相談しましょう。

子宮蓄膿症はどうやって治療するの?

子宮蓄膿症はハムスターだけではなく犬猫でもかかる病気です。
動物の種類に関係なく、治療方法の第一選択は外科手術で子宮と卵巣を摘出してしまうことです。
子宮と卵巣を摘出してしまえば、子宮蓄膿症は完全に治療できます。
ハムスターは犬猫と違って体が小さく、全身麻酔をかけるためのリスクが大きくなります。
麻酔中のハムスターの様子をよく確認しながら、小さな身体にメスを入れ手術しないといけないため、経験のある獣医師による治療が必要になってきます。
外科での治療ができない場合は、抗生物質などを使った内科治療が必要になります。
内科治療は外科治療と比べると麻酔のリスクもないため、高齢のハムスターでも治療しやすいのがメリットです。
しかし、子宮蓄膿症はお薬による内科治療では完全には抑えることができないため、外科治療と比べると治療効果は少なく、限界があるのがデメリットと言えます。
外科治療をするのか、内科治療をするのかは獣医師とよく相談しましょう。

実際の症例

1歳3ヶ月のメスのハムスターが当院に来院されました。
飼い主様はハムスターの元気食欲がなく陰部から膿が出ていることに気づき、別の病院でご相談されたようです。
他院では子宮蓄膿症の診断がつきました。

子宮蓄膿症の治療は外科手術が第一選択になるため、小さい体のハムスターの手術ができる当院にご相談に来られました。
体重は元々130gあったにも関わらず88gまで落ちてしまい、動きもフラフラで目も閉じてしまい、体力も落ちていました。早めの治療が必要だったため、飼い主様と相談し当日手術を実施しました。

上の写真は手術後の様子です。
子宮蓄膿症の治療には、腹部を切開し子宮を摘出する外科手術が必要になります。
その後ハムスターさんは回復し、元気食欲も戻りました。
抜糸で来院された時には体重が122gまで回復していました。

こちらが抜糸後の写真です。

お腹の傷もきれいに治っていますね。

まとめ

ハムスターの子宮蓄膿症は命に関わる病気です。
完全に治すためには外科手術が必要ですが、病院によってはハムスターは体が小さいため外科手術を実施できないこともあります。
犬や猫に比べるとリスクの高い外科手術も、当院では経験豊富な獣医師が担当します。
ハムスターの元気や食欲がなくて心配な場合や、陰部から膿が出ていて子宮蓄膿症が疑わしい場合はぜひ当院へご相談ください。
その他にも、ハムスターの症状で気になることがあればお気軽にご来院ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。