フェレットの腸閉塞について

「最近、いつものようにご飯を食べないな」
「なんだか急に元気がなくなった?さっきまで元気だったのに…」
このように感じたことはありませんか?これらの症状は、フェレットが起こしやすい「腸閉塞」のサインかもしれません。今回はフェレットの腸閉塞に関して解説していきます。フェレットの健康を守るためにも、ぜひご一読ください。

腸閉塞とは

腸閉塞は、消化管の通過障害によって起こる深刻な健康問題です。この状態では、食べたものが腸を通過できなくなり、さまざまな症状を引き起こします。

フェレットの腸閉塞の原因

フェレットの腸閉塞の原因には以下のものが挙げられます。

  • プラスチック、スポンジ、ゴム製品のおもちゃなどの異物の誤飲
  • 胃の中に毛玉が貯まる毛球症
  • 腫瘍や炎症性疾患など

フェレットの腸閉塞の症状

フェレットが腸閉塞になると、さまざまな症状が現れます。

  • 嘔吐や下痢
  • 食欲不振
  • 元気の喪失
  • 体重減少
  • 腹部膨満
  • 腹痛
  • 歯ぎしり
  • 沈鬱

フェレットは肉食動物であるため腸が非常に短く、食べたものが約3時間で便になって排出されます。そのため、便が出ているからといって安心はできません。

フェレットの腸閉塞の診断

腸閉塞かどうかを確かめるためには、いくつかの検査が必要です。

  • 触診
    獣医師がお腹を触って異常を確認します。
  • レントゲン検査
    金属や石などのミネラル質の多い異物は検出可能ですが、布やビニール、プラスチックなどは診断が難しい場合があります。
  • バリウム造影検査
    バリウムを飲ませて消化管の状態を確認します。フェレットは腸が短いため、2〜3時間で診断が可能です。
  • 超音波検査
    異物の存在を推測することはできますが、確定診断は難しい場合があります。
  • 血液検査
    全体的な健康状態を確認します。

上記の検査を組み合わせて行いますが、最終的な確定診断にはお腹を開ける試験開腹が必要となることもあります。

フェレットの腸閉塞の治療方法

腸閉塞の治療は、以下の方法で行います。

  • 外科手術
    明らかな閉塞が確認された場合、外科手術で異物を摘出します。
  • 内科療法
    脱水やショック状態に対する処置を行います。

手術がうまくいけば、多くの場合数日で回復し、元の生活に戻ることができます。

異物による腸閉塞に対して外科手術を行った症例

1歳のフェレットの腸閉塞の症例をご紹介します。今回の症例は食欲不振を主訴に来院されました。

超音波検査を実施したところ、腸管内に異物による閉塞が確認されました。

異物が腸を塞いでいたため、外科手術を行い取り出すことになりました。手術中の写真です。

腸の一部に異物が詰まり、周囲の腸の色が悪くなっているのがわかります。
今回の症例では、誤飲してしまったと思われるおもちゃのゴム風船が詰まっていました。

まとめ

フェレットの腸閉塞は異物などの誤飲が原因となることが多く、深刻な状態になる可能性があります。症状に注意を払い、異常が見られた場合はすぐに獣医師の診察を受けてくださいね。また、フェレットの誤飲しやすいものを置かないようにするなど日常的に予防することで、腸閉塞のリスクを減らすことができます。フェレットの健康と幸せな生活のために、予防と適切なケアをしていきましょう。困ったことがあれば、ぜひご相談ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。