ウサギの鼻涙管閉塞について

「ウサギの目から涙が止まらない」
「病院で目薬を処方してもらったが目やにが多い状態が変わらない」
「目の周りの毛が抜けて赤くなってしまっている」
こんなお悩みをお持ちのウサギの飼い主さんはいらっしゃいませんか?
こういった症状がある場合、もしかしたら鼻涙管が詰まってしまっているかもしれません。
ウサギには鼻涙管閉塞という病気が存在します。
今回はこの鼻涙管閉塞がどんな病気なのか、原因や治療法を症例を交えて解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、ウサギの目のトラブル改善のための参考にしてください。

ウサギの涙

鼻涙管閉塞について理解するためには、まずウサギの目と涙の仕組みを知る必要があります。
ウサギは涙を常に分泌し、瞬きをしなくても目が乾燥しないようになっています。
目から涙が流れたままにならないように調節しているのが鼻涙管という管です。
鼻涙管は目から鼻に通っていて、涙腺で分泌された涙は鼻腔へと入ることで涙が溢れることがないようになっています。
ウサギが涙を流しているということは、この鼻涙管がうまく機能していない可能性があります。

鼻涙管閉塞とは

では、鼻涙管閉塞とは一体どんな病気なのでしょうか。
鼻涙管閉塞とは、その字の通り涙を鼻に通すための鼻涙管が閉塞、つまり詰まってしまうことを言います。
管が詰まることで、本来流れるはずの涙が通らなくなり、目に溢れて涙目になってしまうということです。

ウサギの鼻涙管閉塞の原因は?

ウサギの鼻涙管閉塞の原因として多いのは、歯の不正咬合によるものです。
ウサギの歯が不正咬合を起こすと、伸びた歯の根元で鼻涙管を物理的に圧迫してしまったり、傷をつけて炎症を起こしたりします。
歯の物理的圧迫や炎症によって鼻涙管が閉塞してしまいます。
他にもウサギの鼻炎症状であるスナッフルの原因菌として有名なパスツレラ菌が、鼻涙管の中に入り込んで炎症を起こし、詰まらせてしまうことがあります。

鼻涙管の閉塞を放置するとどうなるのか

ウサギの涙は犬や猫と比べると油分を多く含んでいます。
油分の多い涙が目の周りにあふれて長期間付着してしまうと、毛が抜けてしまったり、皮膚が荒れてしまったりします。

また湿気が多くなることで目の周囲に細菌が繁殖しやすくなり、結膜炎を起こして目やにが多く出たり目が赤くなったりします。
さらに閉塞が続くと、涙を溜める袋である涙囊に涙が溜まり、細菌感染を起こすことがあります。
そうすると悪臭のある目やにが出るほか、涙囊が腫れて痛むようになり、食欲不振につながってしまいます。

検査・治療

検査方法は、フルオレセイン試薬という角膜潰瘍検査薬を点眼して、数分後に鼻に流れてこなければ閉塞を疑う方法や、造影剤を入れて頭部のレントゲンを撮影する方法などがあります。閉塞が確認できたら、まず鼻涙管に細い管を入れ生理食塩水で洗浄を行います。
次に不正咬合や歯根部の状態を確認するために、頭部レントゲンや口腔内検査を行い、歯に異常があれば歯の治療をすることで、根本の原因を解決できます。洗浄によって膿などが鼻から出てくる場合は、感染予防のための抗生剤の点眼を処方することもあります。一度鼻涙管が閉塞すると詰まりやすくなることがあるため、定期的な洗浄が効果的です。

ウサギの鼻涙管閉塞の実際の症例

7歳のウサギが涙目の症状が続き、他院で目薬を処方してもらったが、なかなか良くならないということで来院されました。
両目とも赤くなり涙で目の周囲の毛も汚れてしまっていました。
当院で検査を実施したところ、鼻涙管の閉塞の疑いがありました。
生理食塩水で鼻涙管洗浄を実施したところ、鼻から白く濁った涙が排出され、その後涙目の改善が見られました。

その後は、定期的に通院していただき、鼻涙管洗浄を実施することで症状の再発を抑えています。

まとめ

ウサギは、眼のトラブルが多く出やすい動物です。
放置してしまうと痛みなどで食欲がなくなってしまうことがあります。
ウサギにとって食欲がなくなるのはとても危険です。
一度鼻涙管が閉塞してしまうと定期的な通院が必要になることも多いですが、根本に歯の問題がある場合は、食餌を牧草にするなどで予防することも可能です。
ウサギにとって快適な生活を送ってもらうためにも、気になることがあったら是非早めに来院してご相談ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。