猫の高血圧について

人と同じように猫も血圧が高くなることがあります。
猫の調子が悪く、動物病院にいらっしゃった際に腎臓病や甲状腺の病気と一緒に高血圧が見つかる場合や、健康診断で猫の血圧を測定をすると、偶然高血圧が見つかる場合があります。
「猫の高血圧って肥満が原因?」
「猫の高血圧の症状って何?放置しても大丈夫?」
「猫の高血圧はどうやって治療していくの?」
といった疑問や心配事もあるかと思います。
そこで今回は猫の高血圧について詳しくご説明します。
ぜひ最後までお読みいただき、猫の高血圧についての理解を深めましょう。

猫の高血圧とは

血圧とは、血液が血管の中を流れる時に、血管の壁を押す力のことを言います。
血圧測定では、心臓が収縮して血液が送り出される時の、血管にかかる力がもっとも大きくなる収縮期血圧と、心臓が拡張して血液が心臓に返ってくる際の、血管にかかる力がもっとも小さくなる拡張期血圧を測定しています。
人の場合、収縮期血圧は130mmHgを超えていたら高血圧と言われています。
では猫の場合はどうでしょうか?
猫の高血圧は収縮期血圧が160mmHgを超えていたら高血圧と言われます。人よりも高血圧の基準が高くなっているんですよね。

高血圧には主に

  • 特発性高血圧
  • 二次性高血圧

にわけられます。

特発性高血圧は、血圧を高くさせる病気を併発せずに、持続的な高血圧になっている状態をいいます。
高血圧の猫の13〜20%を占めています。

二次性高血圧は、血圧を高くさせる病気と持続的な高血圧とを同時に発症している状態を言います。
血圧を高くさせる病気には

  • 慢性腎臓病
  • 甲状腺機能亢進症
  • 原発性高アルドステロン症
  • クロム親和性細胞腫
  • 副腎皮質機能亢進症

が挙げられます。

そのほかの要素として、はっきりとしていませんが、年齢とともに血圧は高くなる傾向にあるとの報告もあります。
また猫の種類や肥満による血圧への影響はないとされています。人では肥満など生活習慣病で高血圧になると言われていますが、猫では関係ありません。

猫の高血圧の症状

血圧が高くなることで、特に細い血管が多い臓器が障害を受けます。
これを標的臓器障害(TOD)と言います。眼、腎臓、脳、心臓が障害をうける標的臓器ですね。
これらの臓器が障害を受けることで症状が見られます。
また二次性高血圧の場合は、併発した病気の症状も一緒にみられます。
以下は高血圧の主な症状です。

主な症状

高血圧の主な症状には

  • おしっこの量が増えた
  • 水を飲む量が増えた
  • 目が見えなくなった
  • 目が赤くなっている
  • 発作がおきた
  • 行動がおかしい
  • 元気食欲がなくなった

などが挙げられます。
高血圧は進行した状態でないと症状が出てこない場合もあります。
ご家族が生活の中で、できるだけ猫を観察し、猫に何か普段と違う様子があれば動物病院に相談しましょう。

猫の高血圧の治療

猫の高血圧は進行すると目が見えなくなったり、命に関わることもあります。早期発見・治療が大切になります。
以下はそれぞれの主な高血圧の治療です。

主な治療

  • 血圧を下げる治療
  • 標的臓器障害の治療
  • 併発した病気の治療

などが挙げられます。
猫の現在の状態から獣医師とご家族が相談して最善な治療を行います。

高血圧の治療では、定期的に血圧測定や併発している病気の検査を行います。治療に反応しているか、薬による副作用が出ていないかを確認し、薬の用量を調節する必要性があるためです。
普段から薬を飲ませて食欲が落ちていないかなど、家でもしっかりと猫の様子を観察をしましょう。

症例

当院に来院された高血圧の患者様をご紹介します。
症例は11歳11ヶ月の雑種猫です。
度々起こる嘔吐を主訴に当院に来院されました。
血圧測定では収縮期血圧が226.4mmHgと明らかな高血圧を認めました。
他の検査では、血圧を高くさせるような病気はみつかりませんでした。そのため、原発性高血圧症として血圧を下げる治療を開始しました。
現在では血圧も正常値になり、嘔吐もなくなり、食欲も改善し、活発に動くようになっているとのことです。

まとめ

猫の高血圧は、症状が出てこないと外見ではわからないです。
しかし、猫の体の中ではゆっくりと進行しています。
そのため、ご家族にとっては、急に猫の目が見えなくなったり、突然発作が起きているように見えてしまうんですよね。
普段から猫の様子を観察することはとても大切です。猫になにか普段と違う様子をみかけたらすぐに当院にご相談ください。

参考
猫の診療指針 Part1 p183−188

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6271319/

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。