犬の東洋眼虫症について
夏から秋頃になると、「犬の眼に白い虫がいる!」と言って来院されるご家族がいらっしゃいます。
また、眼の充血や痛みを訴えて来院され、偶然眼に虫を見つけることもあります。
犬の眼に虫を見つけると心配になりますよね。
実際眼に寄生する虫は存在します。
それは東洋眼虫という寄生虫です。
実際は、都内で診断する機会は極めて低く、滅多に出会わない寄生虫です。
東洋眼虫症と診断されると、
「東洋眼虫症って犬から人にうつるの?」
「東洋眼虫は眼の中に入っていってしまうの?」
「犬が東洋眼虫症って言われたけど治療法はあるの?」
といった心配事が出てくるのではないでしょうか。そこで今回は犬や猫にみられる東洋眼虫症について詳しく解説します。是非最後までお読みいただき、東洋眼虫症についての理解を深めましょう。
東洋眼虫症とは
東洋眼虫は、約10〜14mmの大きさで、細長い糸状の形をした寄生虫です。
東洋眼虫症は犬や猫のほか、人にも感染するため人獣共通感染症として知られています。
特徴は動物の眼に寄生することです。眼といっても、眼球の中に入っていくわけではありません。瞼の裏側から眼球の上を覆っている結膜と、涙の通り道である鼻涙管に寄生します。
東洋眼虫症はハエが犬や猫、人の眼に東洋眼虫の幼虫を運ぶことで発症します。ハエが媒介するため、犬や猫から人に直接は感染しません。
東洋眼虫症の発症はハエの活動が活発な夏から秋が1番多くなります。
人や動物の東洋眼虫症は、これまでは九州を中心に西日本で発症していましたが、現在では北日本でも見られるようになりました。
東洋眼虫症の症状
東洋眼虫症の症状は東洋眼虫自体の異物感によって引き起こされます。以下が東洋眼虫症のよくある症状です。
主な症状
東洋眼虫症の主な症状は
- 眼をかく仕草
- 瞼がピクピクしている
- まぶしそうに眼を細めている
- 涙が多い
- 緑色の目やに
- 結膜が赤いなど
などが挙げられます。
寄生した虫が少量の時や感染した初期だと、症状がない場合もあります。
東洋眼虫症の原因と検査
東洋眼虫症はメマトイという種類のハエが原因です。東洋眼虫の幼虫が寄生したハエが、犬や猫、人の涙を吸う時に、東洋眼虫が眼に移り感染します。
検査としては瞼をめくって虫が寄生していないかどうかを確認します。そのほか虫体によって、物理的に眼の表面である角膜が傷ついていないか、二次感染が起きていないかどうかなどを検査します。
東洋眼虫症の治療
東洋眼虫症の治療は虫体に対して、物理的な除去と薬剤による駆虫が挙げられます。また虫体の寄生による角膜障害や痛みに対する対症療法も必要に応じて大切になります。
以下は東洋眼虫症の主な治療です。
主な治療
東洋眼虫症の主な治療は
- 物理的な除去
- フィラリア症予防薬
- 抗生物質
- 角膜保護剤
- 消炎剤
などが挙げられます。
またフィラリア症予防薬は東洋眼虫症の予防効果もあるとの報告があります
実際の症例
今回ご紹介するのは実際に東洋眼虫症を発症した犬の症例です。
他院で治療を行っているが、眼が赤み、涙が多いのが治らないとのことで来院されました。
眼を確認したところ、東洋眼虫が認められました。
問診にて確認したところ、九州に旅行に行き登山をしたとのことでした。
下の写真はこの犬の結膜に寄生していた東洋眼虫の虫体です。
数が多いので、眼の表面に点眼麻酔を施したのち、数回に分けて摘出しました。
まとめ
東洋眼虫症は、以前は西日本を中心に発生する病気でした。しかし、近年の生態系の変化によって、東洋眼虫症の発生が北日本へ北上しています。住んでいる場所に関係なく、発症する可能性がある病気です。
犬や猫が東洋眼虫症になれば、不快感があるだけでなく眼に傷をつけてしまう場合があります。眼の傷は痛みを伴うばかりか、最悪の場合視覚を失うこともあります。早めの対処が大切です。おうちの犬や猫の眼に何か違和感があればいつでもご相談下さい。
また、フィラリア症予防薬は東洋眼虫症の治療のほか、発症の予防になるとも言われています。フィラリア予防をしっかりされていると、東洋眼虫症になる可能性も少なくなります。
もし、飼っている犬の眼に不快感がありそうな場合は、お早めに動物病院にご来院ください。
執筆担当:院長 渦巻浩輔