デグーの下痢について

デグーは慣れればコミュニケーションをとることもできる、近年人気の小動物です。
デグーの来院理由で歯科疾患などと並んで多いのが、下痢です。
今回は下痢の原因の一つである、ジアルジア感染性の下痢を起こしているデグーの実際の症例を交えながらジアルジア感染症について解説していきます。

デグーとは

デグーはデグー科に属するげっ歯類です。
その見た目から、ネズミと比較されることもありますが、生態的にはチンチラに似ています。
デグーは群れで生活する生き物で、穴を掘って生活し、草や樹皮、種子、葉を食べます。
飼育下ではチモシーを主食とし、ペレットを補助的に食べますが、甘いものを好むデグーも多く、糖尿病になる危険があるため注意が必要です。
デグーの便は正常であれば黒っぽい楕円形の形をしており、排便されたばかりであればややしっとりとしています。

デグーの下痢の原因

デグーの下痢の原因には

  • 細菌、ウイルス、原虫、寄生虫などの感染
  • ストレス
  • 食事

などがあります。
特に幼若なデグーでは環境の変化によりストレスを受け、細菌などに感染することもあります。

ジアルジアとは

ジアルジアは消化管の寄生虫の一種です。
ジアルジアに感染した個体の便に含まれる卵を経口摂取することで感染が成立します。
症状は

  • 下痢
  • 体重減少
  • 衰弱
  • 食欲不振
  • 元気の低下

などが挙げられます。

ジアルジアの検査・治療

ジアルジアは、便を顕微鏡で観察することで診断可能です。
虫体は顕微鏡でもわかりやすく、水分の中で泳ぐ様式も特徴的ですが、感染しているにも関わらず虫体が確認できないこともあります。
治療はジアルジアの駆虫薬を使用します。
また、ストレスにより症状が悪化している場合は、整腸剤も併せて使用します。
下痢による脱水が顕著な場合は点滴で水分を補い、食欲が低下している場合は食欲増進剤や強制給餌も併用します。

実際の症例

今回ご紹介するのは、食欲不振と下痢で来院した、若い3ヶ月齢のデグーです。
診察中にも元気がない様子が伺えました。
身体検査では重度の脱水が認められ、便検査ではジアルジアが検出されました。
ジアルジアの感染が原因で下痢が起こっていると診断し、脱水により食欲の低下が起きていると考えました。

脱水を改善するために点滴をし、ジアルジアの治療となる駆虫薬を処方しました。
ご自宅ではお薬の投薬と、強制給餌をしていただき、栄養不足にならないようにしてもらいました。
その後は順調に回復し、ジアルジアも駆虫することができました。

まとめ

デグーの下痢にはさまざまな原因があり、確定診断を下すことが難しい場合もあります。
特に幼若な個体では下痢により体調が一気に悪化することがあるため、注意が必要です。
デグーの状態に合わせた適切な治療をしなければ、命の危険もあります。
いつもより便が柔らかい、食欲がない場合はすぐにご相談ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。