ウサギの避妊手術について

「ウサギも犬や猫と同様に、避妊手術を受けた方が良いの?」
「避妊手術を受けなかった場合、どうなるの?」
「避妊手術のリスクはどのようなものがあるの?」

ウサギを飼っている方なら、一度はこのようなことを考えたことがあるのではないでしょうか?
この記事ではウサギの避妊手術の必要性やメリット、デメリット、手術を受ける場合の適切な時期などについて詳しく解説していきます。
ぜひ、この記事を最後までお読みいただき、ウサギの避妊手術のメリットやデメリットを理解した上でウサギにとって最適な選択ができるよう参考にしてください。

ウサギの避妊手術は必要?

ウサギの避妊手術とは、お腹を開けて卵巣や子宮を取り除き、繁殖能力を取り除く手術です。
この手術は繁殖能力を失わせるだけでなく、子宮疾患(主に子宮癌)や乳がんの予防効果があると言われています。
ウサギは子宮疾患になりやすい動物で、避妊手術をしないメスのウサギの多くがいずれ子宮疾患を発症します。
子宮疾患は命に関わる重大な病気なので、避妊手術はウサギの命を救うことに繋がります。

ウサギの子宮疾患について

上述の様に、ウサギは子宮疾患が多いとされています。その中でも悪性の子宮腺癌が最も多いです。
メスのウサギは4歳で約60%、6歳では約80%の確率で子宮腺癌といった子宮疾患にかかるとされています。なかには生後10ヶ月で子宮疾患を発症したという報告もあります。

子宮疾患には、子宮内膜過形成といった良性の病気もありますが、時間経過とともに悪性の子宮腺癌に発展することもあります。

ウサギの子宮疾患は症状が分かりづらいことがあります。
初期の頃は、無症状が多く、食欲は末期にならないと低下しないことが多いです。
尿に血が混じることもありますが、数日で改善し、見過ごされることもありますし、大量の血尿として出血が認められ、一気に致命的な状態に陥る場合もあります。
最終的には肺転移や血尿による貧血、お腹の中で子宮が巨大になることで消化管を圧迫し食欲不振を起こすことで発見されることも多々あります。
また、出血がひどい場合では緊急手術が必要になります。
子宮腺癌を発症してから転移するまで約1年とされています。

ちなみに、子宮腺癌の発症と出産の有無は関係ないといわれています。

避妊手術のメリットとデメリット

メリット

避妊手術のメリットは、子宮疾患のリスクを大幅に下げられることです。
またホルモンの影響で起こる偽妊娠や乳腺腫瘍のリスクも減らせます。
メスの縄張り意識による攻撃行動を減らし、ストレスを軽減することもできます。

デメリット

避妊手術の最大のデメリットは麻酔や手術のリスクです。
どのような手術でもリスクはゼロではありませんが、ウサギの麻酔は犬や猫と比べてもリスクが高いとされています。
ウサギはストレスに弱い性質であることが、その理由の一つとされています。

麻酔のリスクを減らすためには、血液検査など事前のリスク評価が大切です。
術後には一時的に、食欲が落ちる場合もあるので食事の補助や点滴が必要になることもあります。
ホルモンバランスの変化で太りやすくなることが多いので、こまめに体重を測定し食餌を調整することも重要でしょう。

避妊手術はいつ受ければいい?

子宮腺癌になってからでも、転移する前に手術ができれば完治は可能です。
しかし、子宮腺癌は気が付くことが遅れ、発見された時点では転移が成立していることが多いです。

上の写真は避妊手術後の傷口の写真です。適切な時期に手術が出来ると手術リスクも抑えられ、傷口も小さく済みます。
体が成熟したら、早めに避妊手術を受けることが良いですね。

まとめ

ウサギの避妊手術は、子宮疾患のリスクを減らし、ウサギの健康と長寿を促すために重要な選択肢です。手術のメリットとデメリットを理解した上で、ウサギの将来を見据えて総合的に判断することが大切です。
ウサギの避妊手術に関するお悩みをお持ちの方は、動物病院に相談してみてください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。