ファットテールジャービルの死亡胎児遺残について

動物の繁殖をしない飼い主様にとっては、ペットの子宮内で胎児が死亡することや、その胎児が子宮に残ってしまう状況を考えることはあまりないかと思います。
しかし、ご自宅でのペットの出産を考えている飼い主様や、実際に経験をした飼い主様は「胎児が生まれる前に亡くなってしまったら…」と考えられたことがあるかと思います。
今回は胎児が子宮内で死亡し、娩出されなかったファットテールシャービルの実際の症例を交えつつ、死亡胎児の子宮内遺残について解説していきます。

子宮内で胎児が死亡する原因

原因不明であることが多いですが、

  • 赤ちゃんの染色体異常
  • 先天的な奇形
  • 母体との不適合

などが挙げられます。

症状と検査方法

自覚症状がないこともありますが、

  • お腹を痛がる
  • 元気の低下
  • 食欲の低下
  • 陰部からの出血
  • 腹部の腫れ

などの症状を出すことがあります。
検査方法は、超音波検査が有用です。
超音波検査により、心拍の確認できない胎児を見つけます。

治療

小さい動物たちの分娩を誘発する薬剤の容量は決まっていません。
自然と娩出される場合や胎児が母体に吸収される事もありますが、子宮内に胎児が留まってしまう場合や母体の状況が芳しくない場合には、手術による胎児の摘出を行います。

実際の症例

11ヶ月のファットテールジャービルが、「出産後から陰部の出血が続き、食欲や元気がない。」と来院されました。
超音波検査を実施したところ、腹腔内に心拍を認めない胎児が確認されました。
経過を見ても症例の状態が良くなることはないと判断し、当日に手術にて子宮に残った死亡胎児を摘出しました。

摘出した死亡胎児
手術後の様子。無事終わってよかったね!

まとめ

今回はファットテールジャービルの死亡胎児の子宮内遺残について解説しました。
出産後は母体の体調が悪くなることもありますが、今回のような不測の事態に陥いることもあります。
特別な状況だからこそ、いつもより気を配り、少しの異変でも動物病院にご相談いただければと思います。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。