胃ろうチューブを設置した慢性腎臓病の猫について
胃ろうとは、胃とおなかの外をつなぐ穴を指します。
その穴に設置するチューブを胃ろうチューブといい、最大の目的は胃ろうチューブから栄養を摂ることや薬の投薬です。
一見すると、管理が大変そうだと思われるかもしれませんが、メリットは多いので、実際の症例を交えつつしっかりと解説していきます。
胃ろうチューブの設置を検討する病気
胃ろうチューブの設置はどういう時に行うものなのでしょうか?
1つはお口の中や食道に何かしらの問題があり、食べ物を食べても胃まで進まない時です。
例えば、お口の中に扁平上皮癌などの腫瘍がある場合です。
2つめは自力での食餌では満足なカロリーを取れない時です。
摂れていないカロリー分のご飯は胃ろうチューブから入れることができます。
例えば、慢性腎臓病や抗がん剤中で食欲が安定しない、食欲がない場合に提案します。
3つめは1、2の状態が今後予想される場合です。
胃ろうチューブのメリット
胃ろうチューブ設置のメリットは、そのチューブの太さです。
ドライフードをそのままとはいきませんが、ミキサーなどで砕きお湯と混ぜることでスムーズに胃に入れることができます。
また、嘔吐を頻発に起こす症例でも使用可能であること、多くの猫がストレスを感じるカラーの装着が必要ないことなどが挙げられます。
胃ろうチューブのデメリット
デメリットとしては
- 内視鏡を置いていない動物病院では、開腹手術を行わないと設置ができないこと
- 麻酔が必要
- 胃ろうチューブの設置部位の傷の管理が必要
- チューブをいじらないように服を着る必要がある
- 時間が経つと交換が必要
- 他の栄養チューブ(カテーテル)と比べると高価
などが挙げられます。
胃ろうチューブの管理方法
胃ろうチューブは設置部位の傷のチェックや、チューブを清潔に保つため、お家での管理も必要です。
設置後、傷の感染が起こりやすいのは1〜2週間とされ、穴が安定するまでには約1ヶ月程度かかります。
そのため1週間は毎日傷口のチェックと洗浄をし、その後も必要であれば継続した洗浄が必要になります。
使用しているとチューブ内にご飯の残りカスが溜まることがありますので、チューブ内をきれいにするために食用のお酢などを薄めてチューブ内を洗浄します。
実際の症例
慢性腎臓病と診断された猫ちゃんが、胃ろうチューブの設置を希望して当院に来院されました。
この症例は、腎臓病の猫ちゃんではよく見られる食欲の低下がありました。飼い主様も医療関係者であり、胃ろうチューブのメリットをご存知のため、飼い主様たっての希望で、麻酔下内視鏡にて胃ろうチューブを設置しました。
その後、食欲の低下時や内服が必要な時は、胃ろうチューブから栄養や水分、薬やサプリメントの摂取ができるようになり、
「無理やりお薬を飲ませなければならない」
「嫌がるご飯を強制的にあげなければいけない」
といった猫ちゃんと飼い主様、双方のストレスを緩和することができたため、飼い主様も大変満足されていました。
まとめ
胃ろうチューブは抵抗感を示される飼い主様も一定数いらっしゃいますが、他の栄養チューブの設置と比べ、顔周りの煩わしさや、嘔吐によるカテーテルの脱出もありません。
また、一番長く使用できる栄養チューブも胃ろうチューブです。
頻繁に交換が必要なチューブは猫ちゃんたちのストレスにもなります。
今現在、「食欲不振や投薬に困っている」「他の栄養チューブをしているが、交換が頻繁で大変」などがあれば、一度胃ろうチューブの設置についても考えても良いのかもしれません。
病気は見ていてしんどい時もありますが、猫ちゃんにとってなるべくストレスのない時間を過ごせてあげられれば幸いです。
執筆担当:院長 渦巻浩輔