チンチラの臼歯過長について
チンチラは一生涯に渡り伸び続ける常生歯という歯を持っています。
常生歯はご飯を上顎と下顎の歯を使ってすり潰すようにして食べることで、歯をすり減らしていきます。
しかし上下の歯をうまく使うことができていないと異常に伸びる歯が生じ、舌や内側の頬を傷つけることとなります。
今回は臼歯(奥歯)過長が原因で食欲不振になったチンチラをご紹介しながら解説していきます。
チンチラの正常な歯は?
チンチラの正常な歯はエナメル質、象牙質、セメント質を形成する細胞が常に働き、作り続けます。
正常な歯は上下とも、前歯が2本、奥歯が左右で8本ずつあります。
チンチラの前歯のエナメル質は前面にしか存在せず、その色はオレンジ色が正常です。
チンチラは他の草食動物と違い、齲歯になりやすいことも特徴の1つです。
チンチラの歯が異常に伸びる原因
チンチラの口のトラブルは栄養学的な原因と遺伝的な原因があると考えられています。
栄養学的な原因として、飼育されているチンチラは野生のチンチラよりも歯が長いという研究から、野生のチンチラよりもやわらかい食餌を食べることにより咀嚼の回数が減り、歯が摩耗しないためと考えられています。
食欲不振やよだれなどの症状がないチンチラでも、35%で歯の過長があったという報告があることから、飼育環境下でのチンチラと口のトラブルは切っても切り離せない病気であると言っても過言ではありません。
伸びた時の症状は?
チンチラでは、上顎の奥歯は頬側に伸び、下顎の奥歯は舌側に伸びることで組織を傷つけることが多いと言われています。
そのため痛みにより
- 食欲不振
- よだれが出る
- 動きが悪い
などが起こり、食欲の低下が続くと
- 体重減少
- うんちの減少や縮小
- 毛並みの悪化
が見られます。
歯ぎしりをする症例もいますが、歯ぎしりは消化管うったいなど起こるため、見極めが必要です。
検査・治療
検査は口の中のしっかりとした観察です。
歯の伸び具合はもちろん、よだれの量や潰瘍になっている場所がないかを見ていきます。
チンチラは口が小さく、観察が難しい場合は沈静や麻酔をかける必要があります。
歯根に問題が生じている場合は、口腔内の観察では分かりませんので、頭部のレントゲン検査を実施します。
治療は異常に伸びた歯を削ることです。
基本的には麻酔下で実施しますが、全身状態が悪いチンチラでは無麻酔で実施することもあります。
実際の症例
症例は5歳1ヶ月のチンチラです。
食欲の低下について当院にご相談にこられました。
口の中を検査したところ、異常に伸びた歯と頬に炎症を起こしている場所があることが確認されました。
場所が奥歯であったため、麻酔下で歯科処置を行い伸びた歯を削り、他の歯にも齲歯などの異常がないかをしっかりと確認しました。
歯科処置後は早期に食欲が戻り、元気に過ごしてくれています。
まとめ
チンチラの歯科疾患は一度起こってしまうと、定期的な治療が必要な場合が多いとされています。
摩耗性の高い食餌や木の枝を与えることで奥歯の不正咬合を、またケージをかじってしまう個体はケージをかじらないように工夫することで前歯の不正咬合を予防することができると言われています。
チンチラは口のトラブルで命を脅かされる場合があります。
まずは予防をしっかりしていただき、食餌を残す量や便の大きさ、活動性を毎日チェックしていただければと思います。
執筆担当:院長 渦巻浩輔