フェレットの誤食による腸閉塞について

腸閉塞とは何らかの原因で腸が詰まってしまうことを指します。
「家に落ちていたものがまさか閉塞の原因となるなんて!」と、なることも。
今日はそんな誤食により腸閉塞を起こしたフェレットの症例を紹介いたします。

腸閉塞とは

フェレットの病気には、リンパ腫、インスリノーマ、副腎腫瘍など代表的なものがありますが、もちろんその病気だけではありません。
腸閉塞もその一つで、原因には異物の誤食、腫瘍などがあります。
腸が閉塞すると食べたご飯が腸内をスムーズに通過できなくなり、閉塞した場所よりも口側に食べ物が溜まっていきます。また、詰まった腸内ではガスが異常発酵し、嘔吐や腹痛を引き起こします。
その他にも元気の低下や食欲不振が見られ、便が出ないこともあります。

検査

まずは異物を食べている形跡がないかを飼い主様にお聞きします。
異物を食べた形跡がある場合は、誤食を疑い検査を進めますが、他の病気を見落とさないようにします。
では実際の検査はどのように行なっていくのでしょうか?
腸閉塞の確認にはレントゲンや超音波検査などの画像検査が有用とされています。
レントゲンでは金属などであればしっかり写りますし、厚みのあるプラスチックでも写ることがあります。
超音波検査では異物により詰まった腸を見つけ、その前(口側)の腸では液体などにより拡がった腸を確認することができます。

治療

腸の閉塞が完全に起こっていない場合は、点滴や腸の動きを良くするお薬などの内科治療で様子を見ることもありますが、完全に閉塞した場合は外科的な治療が必要であることが多いとされています。
また、完全閉塞では腸の壊死が起こっている可能性があるため、お腹を開けて腸の血行を評価することが必要です。
壊死が無い場合は腸を切って異物を取り出し縫合しますが、壊死がある場合は壊死している腸を取り除き、切り取った腸の前後の腸を繋ぎ合わせる必要があります。

それでは実際に腸閉塞を発症し、外科手術を行なったフェレットをご紹介します。

腸閉塞の実際のフェレットの症例

吐いて、食欲がないフェレットさんが当院に来院されました。
飼い主さまも特に心当たりはなく、とても心配されてました。
レントゲン検査では特に異常は見当たらなかったものの、超音波検査では、十二指腸という胃から出たすぐの腸で異物による腸閉塞を確認することができました。
以上の結果から、異物は腸を完全に閉塞している可能性が高いと診断し、手術による摘出手術を行いました。

手術は無事に成功し、術後は食欲が戻り元気に過ごしています。

まとめ

腸の閉塞時間が長いと、腸管壁の血管が異物により圧迫され血行障害が起こります。
血行障害が起きると、腸が壊死し穴が開いてしまう穿孔と言われる状態になり、お腹の中に腸の内容物が漏れ出します。
これは手術の難易度を上げ、また一気に命の危険度が高まることとなります。
腸閉塞は未然に防ぐことが可能な病気です。
今一度、お家にペットたちが食べても危険なものが落ちていないか、口に含める場所にないか確認していただければと思います。
もし、飼っているフェレットさんが吐いているなどあれば、すぐに動物病院に来院してください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。