犬の眼球脱臼(眼球突出)について

犬の眼球脱臼は飛び出した眼球が瞼によって締め付けられ、強い痛みや重度な充血を伴う病気です。
中には眼球が瞼によって締め付けられることによって眼圧が上昇し、視覚が消失してしまうこともあります。
眼球脱臼は多くの場合は交通事故や犬同士の喧嘩から発症する外傷性疾患で緊急性が非常に高い疾患です。

今回ご紹介するのは外傷によって眼球脱臼を発症し、外科手術によって治療された症例です。

犬の眼球脱臼に対して外科手術を行なった症例

症例はポメラニアンの雄、8歳で同居している別のワンちゃんに噛まれた後、だんだんと眼が赤くなってきたため来院されました。
来院時に眼圧を測定しましたが、測定上限を振り切るほどの高眼圧になっていました。

その時の顔の様子が以下の写真になります。
苦手な方はご注意ください。

眼球が瞼によって締め付けられ、どんどん充血が悪化してしまっていました。
このままではこの眼の視覚は消失してしまうと判断し、緊急的に手術を行いました。
手術は全身麻酔下で行われ、眼球を元の位置に戻すと同時に、再脱臼を防ぐことと、角膜(目の表面)の保護を目的に、瞼を上下で縫い合わせるという術式を用いました。

右眼が異常に充血し、飛び出ていることがわかります。
しばらく眼球を保護するために瞼を縫合しています。

その後は自分で眼を触ってしまわないようにエリザベスカラーを装着し、縫合した瞼の隙間から点眼処置を行い、治療していきました。
手術から1週間経過したところで瞼の縫合を外してあげると、眼球は依然としてやや大きいものの、充血はほぼなくなっていました。
そこからさらに1週間経過すると眼球の大きさも以前と変わらないサイズまで改善しました。 また、視覚は治療後に回復し、今まで通りの元気な生活に戻ることもできました。

治ってよかったね!

まとめ

眼球脱臼は緊急性の高い疾患で視覚を消失したり、場合によっては強い痛みから眼球摘出を行わなければいけないこともあります。 治療に成功するかどうかはいかに早く治療を開始できるかにかかっていますので、疑わしい症状がある場合はすぐに動物病院にご相談ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。