猫の断尾について

猫の尻尾は細いため、何かの圧迫により血が通わなくなると比較的簡単に壊死してしまいます。
尻尾が壊死するとその壊死が波及して病変が広がったり、壊死組織が全身に巡り、全身の状態が悪化することもあります。
その場合は悪化を防ぐために、尻尾を切除する断尾手術が必要となることがあります。
この尻尾の壊死はさまざまな原因によって起こります。

  • ストーブの上に乗って、尻尾を垂らしていたら火傷してしまった。
  • 電動ソファーを動かしたら尻尾が巻き込まれてしまった。
  • 子供が気づかない間に尻尾に輪ゴムを巻いてしまった。
  • 尻尾の先に腫瘍などができて、気になってずっと舐め続けてしまう

など、さまざまなものがあります。

今回ご紹介するのは、小さいお子さんが誤って輪ゴムを巻いてしまったことにより尻尾が壊死し、断尾手術を行なった症例です。

猫で断尾手術を行なった症例

症例は雑種猫、去勢雄、1歳で尻尾を気にするという主訴で来院されました。
病院で観察してみると、尻尾に輪ゴムが巻かれていて、巻かれている場所から先端の方が赤黒く変色していました。

輪ゴムを外した状態で尻尾が改善するか経過を見ましたが、改善するどころかさらに壊死が進行していることが確認されたため、断尾手術を行うこととなりました。

輪ゴムを取ってあげても変色は改善しませんでした。

手術は全身麻酔をした上で行われました。
壊死している尻尾を完全に切除するために、正常な尻尾の部分から切除を行っています。

左:手術前 右:手術後

その後は自分で尻尾を触ってしまわないようにエリザベスカラーを装着し、抗菌薬などの投与を行いながら治療していきました。
その後、1週間で尻尾の先端の糸を抜糸し、治療は終了となりました。

以前、似たようなケースで尻尾をかわいくおしゃれにしたくて、飾り付きのゴムを巻いた結果、尻尾が壊死し断尾手術になったケースも経験したことがあります。
もし飼っている動物が尻尾を気にしているなどあれば動物病院にご相談ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。