犬の瓜実条虫について

瓜実条虫とは乳白色の米粒のような片節が長く連なったサナダムシの仲間です。
まれに肛門周囲を気にするような行動をすることもあり、「便や肛門周囲に米粒のようなものが付着している…」と飼い主様が気づいて動物病院を受診することもあります。

この瓜実条虫は、犬から犬に感染するわけではありません。
瓜実条虫はまずノミの幼虫に卵の状態で食べられ、ノミの体内で成長します。
そして、犬がそのノミを口にすることで瓜実条虫に感染します。
つまり瓜実条虫に感染しないためには瓜実条虫だけではなく、ノミの寄生にも警戒しなければなりません。

症状は、成犬では無症状のことが大半ですが、幼犬の場合多数寄生している場合は、下痢(血便)や食欲不振の消化器症状が見られ、痙攣などの神経症状が起きることもあります。
通常の寄生虫とは異なり、糞便検査での虫卵検出は難しく、主に糞便上の片節を肉眼で確認することで診断することができます。

瓜実条虫の犬の症例

症例は、3歳のワンちゃんで便に虫みたいのがついているという主訴で来院しました。

持ってきてもらった便に寄生虫がついていたので、そのまま顕微鏡で確認しました。

顕微鏡で確認した瓜実条虫の虫卵

また、皮膚を確認したところノミも寄生していました。

本症例も、ノミが最初に寄生し、痒くてノミを舐めたことで瓜実条虫に感染したことが疑われました。
それぞれ瓜実条虫とノミを駆虫薬によって治療し、両方の寄生虫を駆除いたしました。

皮膚に寄生していたノミ

冒頭でお話しした通り、瓜実条虫はノミを食べることで犬へ感染するため、瓜実条虫の駆虫だけ行なってもノミがいる限りは完全な瓜実条虫の駆虫はできません。
瓜実条虫の再発を繰り返さないためには、ノミの駆除を行うことが最も重要です。
ノミの寄生が見られた場合は、ノミが室内で繁殖している可能性があるので、ベットやタオルなどの洗浄や室内清掃を行うとより安心です。

ノミは瓜実条虫以外にも感染症を媒介する可能性があります。
室内飼いだから大丈夫と思わず、月に1回の定期的なノミ予防をするようしてあげてください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。