犬の腸閉塞(腸切開)について

犬が消化吸収できない異物を誤って食べてしまい、その異物が消化管で詰まってしまうと(完全閉塞)、食餌や液体が通過出来なくなり、嘔吐・食欲廃絶などの臨床症状が激しく出現します。
また、異物が消化管に詰まっていても異物の傍を食餌や液体が通過できる場合(不完全閉塞)は、診断が通常より難しい場合もあります。
症状は食欲不振、元気消失、腹痛、嘔吐、下痢などが激しく出現します。

診断はレントゲン検査や超音波検査などの画像検査にて行い、異物が内視鏡が届かない腸まで行ってしまった場合は、手術によって異物を摘出することで救命が可能です。

今回はプルーンの種を食べてしまい、消化管に詰まってしまった症例です。

犬の腸閉塞に対して外科手術(腸切開)を行った症例

症例は2歳11ヶ月のワンちゃんで、1日前から吐いており食欲が無いとのことで来院しました。
腹部超音波検査で小腸に種と思われる異物が確認できました。

小腸に確認できた種と思われる異物

飼い主様とご相談の上、内視鏡で届く位置ではなかったため、その日のうちに手術にて異物を摘出することになりました。

腸が一部腫大しており、中に異物が詰まっていました。(矢印)

異物を確認後、腸切開にて摘出しました。
その後、切開した腸を縫合し、手術は終了となりました。

摘出したプルーンの種
種を摘出後縫合したところ

その後、数日で元気と食欲が開腹し、無事退院してくれました。

無事抜糸もしました!

異物の診断は知識と技術が必要になり、不完全閉塞の場合、診断が難しい場合もあります。

ワンちゃんが急に吐いていて食欲が無い場合は、誤食の疑いが無くても、すぐに病院にかかるようにしてください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。