猫の鼻腔内異物について

鼻腔内異物とは、異物を鼻腔内に入ることで鼻が詰まってしまい、呼吸に障害をきたしてしまう疾患です。
異物に気づかず長期に渡り異物が鼻腔内に存在すると、周囲に肉芽組織が形成され、さらに病態の悪化に繋がることもあります。
また、異物が鼻咽頭に残存することで、二次的な鼻咽頭狭窄へ進行する場合もあります。
症状は、急性のくしゃみ・逆くしゃみ・鼻汁・顔を振るなどが一般的です。

今回は鼻腔内異物を摘出した猫ちゃんの症例になります。

猫の鼻腔内異物の症例

症例は5歳の猫ちゃんで、数日前に猫じゃらしで遊んだ後から調子が悪いとのことで来院しました。
来院時、呼吸障害が認められ、各種検査と問診により鼻咽頭における鼻腔内異物が疑われたため、すぐに内視鏡下で鼻腔内異物の確認を行いました。

内視鏡にて鼻咽頭を観察したところ、猫じゃらしが片方の鼻の穴を塞ぐように詰まっていました。

内視鏡検査にて、猫じゃらしが鼻の奥に詰まっていた。

猫ちゃんは犬より頭が小さいので摘出に苦労しましたが、無事異物を摘出することができました。その後鼻道の開通を確認し、鼻腔洗浄を実施後、麻酔を終了としました。

摘出した猫じゃらし

覚醒後、異物の影響で多少炎症は残るため鼻炎症状はありましたが、呼吸は劇的に改善しました。

呼吸も楽になってよかったね!

鼻腔内異物は特徴的な臨床所見はあるにも関わらず、診断・治療が難しい場合もあります。

もし、飼っている猫ちゃんの呼吸が急に苦しそうになった場合はすぐに動物病院にご相談ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。