犬のフィラリア症について

フィラリア症(犬糸状虫症)とは主に犬の心臓に寄生する寄生虫です。犬以外だとフェレットや猫にも感染します。
現在はフィラリア予防薬の普及により、都市圏ではほとんど遭遇しなくなりました。しかし予防を怠ることで都市圏でも感染する可能性はまだあり、都市圏での感染例は家にずっといて散歩に出ないから、予防をしなかったというワンちゃんがほとんどです。
このフィラリアは蚊によって媒介され、心臓の肺動脈という血管に寄生し、寄生した虫の数が多いと致命的な症状が出てきます。

大量に寄生した場合、駆虫薬を使い一気に虫が死んでしまうと死んだ虫が血管に詰まってしまうため、他の寄生虫と違い安易に駆虫することができません。
現在日本では犬糸状虫の駆虫薬は販売されていないため、投薬による予防医療が中心となっています。

今回はフィラリアに感染したワンちゃんの症例になります。

犬のフィラリア症の症例

症例は6歳4ヶ月の犬で、健康診断を目的に来院しました。
ずっと室内飼いだったため、しばらくフィラリアの予防をしてないとのことのため、健康診断と一緒にフィラリアの検査を行いました。

検査結果(フィラリア抗原検査結果)はフィラリアの感染が陽性でした。

フィラリア感染による心臓への負担具合を確認するために心臓超音波検査を実施しました。
心臓超音波検査においても「イコールサイン」と呼ばれる感染を示す所見が認められましたが、感染による心臓への負荷はまだ認められませんでした。(フィラリアに感染すると心臓の右側へ負荷がかかる。)

イコールサインと呼ばれる、寄生虫の存在を示すサイン

本症例では、寄生数が少ないため症状が出ていないと考えられたため、米国犬糸状虫学会(AHS)の提唱しているCombination slow-kill法に則り治療を開始しました。
この治療法は予防薬であるイベルメクチン・モキシデクチンとドキシサイクリンを組み合わせた治療法になります。
今後、フィラリア抗原検査が陰性になるまで、継続して治療していきます。

フィラリア症は犬やフェレットだけではなく、猫にも感染することが知られています。
感染してから治療となると、治療が難しく致命的になってしまうこともあります。
月に1回予防薬を飲ませる、もしくは塗布することで、基本的には感染を防ぐことができるので、蚊が出る季節は予防をしっかりしてあげてください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。