猫の避妊手術について

避妊手術とは雌の不妊化の手術であり、子宮と卵巣を摘出する手術になります。雄の不妊化の手術は去勢手術と呼びます。
避妊手術をする目的は、一般的に望まぬ妊娠を防ぐためとされていますが、私たち獣医師が避妊手術を薦める一番の目的は、将来的な病気の予防のためになります。
中でも猫ちゃんの場合、乳腺癌の発症予防を目的に避妊手術をお勧めすることが多いです。

統計的なお話ですが、

  • 病気で亡くなってしまう猫ちゃんの約1/3が「がん」と言われています。
  • 猫ちゃんの悪性腫瘍で一番多いのは乳腺癌です。(乳腺癌の99%は雌に発生します。)
  • 猫ちゃんの乳腺にしこりができた場合、約80%が悪性と言われています。
  • 治療方法は乳腺を全て摘出(猫ちゃんは左右に合計8個の乳腺がある)するしかありません

この乳がんの発生は、ホルモンバランスと関係があることがわかっています。
そのため、避妊手術をすることで最大91%の乳腺癌の発生率を低下させることができます。

猫の避妊手術の症例

今回は避妊手術をした猫ちゃんの症例です。
症例は生後半年の猫ちゃんで、避妊手術を目的に来院しました。

避妊手術は全身麻酔下の手術になるため、手術前の検査を行った上で避妊手術を行いました。
手術も滞りなく終わり、元気に目を覚ましてくれました。

よく聞かれるのが、手術時間や傷口についてです。
手術時間は一般的には30~40分程度とされていますが、当院では血管シーリングシステムを導入しているため、大体15~20分程度で終わることが多いです。
傷口は、通常臍の下から下腹部真ん中まで2~4cm程度切開して手術を行います。当院では猫ちゃんの負担を考え、なるべく傷口を小さく行うように努力しています。

今回の猫ちゃんも約1cm程度の傷口で手術することができました。

乳がんで苦しむ猫ちゃんが少しでも減るように、避妊手術はなるべく早期に行なってあげてください。

当院では「乳がんで苦しむ猫をゼロにする」キャットリボン運動に協賛しております。 詳しくは下記ホームページをご覧ください。

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執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。